中小企業が「預り金」である消費税を“ネコババ”?
ちょっと気になる「税金」の雑誌記事…
この記事はマズい内容でした。5%から8%になると、
ネコババできる額が増えるのだからラッキーではないか
とのこと。この理解・発言には、ただ呆れるだけです。あまりにも中小企業をバカにした記事です。
消費税は販売先から預かった税金を納めるという性格の税金
そもそもこの理解が間違いの元ですね。平成11年以降の国税庁の宣伝文句そのままの受け売りで、金融ジャーナリストの記事としては随分と拙いです。
まず司法の解釈。東京地裁H2.3.26・神戸地裁H9.7.14・最高裁H11.7.19・鳥取地裁H12.5.16・東京地裁H14.4.18といった判例から、消費税は価格の一部を構成しており、消費者に納税義務がなく、事業者に徴収義務がない以上、預かり金でもなく、預かり金的性質を有するものでもない…と司法は考えていることがわかります。
次に学説。「法的な意味において、事業者には、消費税の転嫁の義務または転嫁の権利はない(田中治 第4章・金子宏編『租税法の基本問題』有斐閣2007 p701)」という解釈が多数説・有力説でしょう。
そして税理士界。「張江裁判」顧問税理士グループ事務局・中島美和氏によれば「今日通説となっている、消費税は「価格の一部である」という見解」で、通説とのことです。
最後に立法当局。平16年4月の総額表示改正時の財務省主税局・上竹良彦氏によれば「受領する消費税分は財貨やサービスの価格の一部を構成する」とのこと。(引用・参照元)
小難しい理論や解釈を無視したところでも、消費税は現実社会においても決して預かり金などではなく、当然に価格の一部を構成しているという「動かしがたい現実」があります。自由経済市場においては、すべて税込価格で決定されます。そうなりますと、消費税増税時は、どこかが増税分をかぶらないといけなくなりますが、それは決して大企業ではないことは明らかです。
消費税滞納の原因は、赤字企業による消費税分のネコババ
と批判する前に、そもそもここまで高い滞納率である消費税の制度に問題があり、批判されるべきだとは考えないのでしょうか?
あまりにもヒドい記事だったため、備忘録として記しておこうと思った次第です。
http://biz-journal.jp/2013/05/post_2015.html
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selected by 名古屋の山本快夫税理士事務所