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コーポレート・ガバナンスと課税庁による調査

昨日の中里実氏(東大院教授)による研修会で、大企業も中小企業もコーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題は、現在進行形で模索中だと改めて考えさせられました。

中里実氏によれば、ハーバード大の教授等による論文「Corporate Governance and Taxation」において、「会計監査よりも課税庁による調査の方がコーポレート・ガバナンスに効果的」とのことです。

コーポレート・ガバナンスの観点から有効とされている外部機関の制度として、大企業では社外監査役や公認会計士監査、中小企業では会計参与がありますが、上記の課税庁による税務調査がコーポレート・ガバナンスに果たす役割は、中小企業だけでなく大企業においても相当に重要であると、改めて考えさせられました。

今後の日本でも、課税庁による税務調査の存在意義が見直され、強化されていくのかも知れません。

 

税務上「妥当」な役員退職金の決め方・考え方

ご存知のとおり、役員退職金の税務は面倒・リスクを伴います。

創業者などの特別功労者に対する退職金支給額を決定するときの理由付けについて、ひとつのサンプルです。議事録にも明記しておきましょう。

会社設立以来、終始一貫して実質的な支配権を有し、常に会社運営の重要な企画に当るほか、自らも販売営業の陣頭指揮に立ち、従業員育成にも注力し、財務金融面に卒先して携わるのみならず、資金繰りが苦しい際は私財の投入や担保提供をし、現在の会社の基盤を醸成し、その貢献度は著しく高いものと認められる。このように特に優れた経営活動による貢献については、特段の考慮をするのが相当であると判断した。

それでも、創業者や連帯保証人といった功労加算を含んだところで、功績倍率は3倍以下に敢えてするのが税務上のセオリーだと私は考えています。税務調査で否認され、裁判で争った場合、裁判官は3倍よりも少なく判断する場合が多く、圧倒的に納税者に不利となります。

従いまして、税務調査で問題視・否認されずに、「税務において決着」を目指すことを実務上は優先すべきだと私は考えます。

 

 

 

 

 

税務調査における質問応答記録書(自白調書?)

税務調査において、自白調書とも言われ、しばしば登場する「質問応答記録書」ですが、改めて注意喚起させていただきます。

納税者に何のメリットも無い「質問応答記録書」への署名押印についてですが、納税者の任意とされていますので、躊躇せずに遠慮なく断ってください。調査官が調書に記載した内容を問わず、一律に断ってください。

断り方ですが、まずは、「サインは強制でしょうか?」と調査官に質問し、サインしない旨を伝えましょう。

H25.6.26国税庁 課税総括課情報 第3号「質問応答記録書作成の手引について(情報)」の問15において、

…(略)…署名押印は回答者の任意で行うべきものであり、これを強要していると受け止められないよう留意する。…(略)…

とされています。

また、問3において、

納税義務者等の回答内容を主要な証拠として重加算税を賦課決定する事案である。

ことを質問応答記録書を作成する場合に挙げていますので、「質問応答記録書」へ署名押印した場合は、重加算税に直結することになります。

署名押印の拒否だけでなく、記載された内容にも同意できない場合は、その旨を明確に調査官に伝えることも忘れないようにする必要があります。奥書で、記載内容に誤りがないことを認めた場合にはその旨を記載することになっていますので。また、重加算税の要件である「故意」による仮装・隠蔽をした供述内容に誘導されたり、そのような筋書きが用意されているケースをしばしば見受けられますので、くれぐれも注意してください。

 

なお、税務調査において、「質問応答記録書」への署名押印を拒否することと、調査官からの質問に対して答弁しないことや、検査に対して拒んだり妨げたり忌避することとは異なります。ちなみに、強制調査における国税査察官による供述調書の録取であっても、供述拒否・署名押印拒否は認められています。

 

連絡なしに突然、税務署が来たときの対応

もし、税務署の調査官が、何の連絡もなく、
ご自宅やお店に来た場合は、本記事内容を
調査官に伝えるか、そのまま見せてください。

そのうえで、すぐに調査官から税理士に連絡させるか、
ご自身にて税理士に直接連絡してください。

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「調査手続の実施に当たっての
基本的な考え方等について(事務運営指針)」

の第2章 2(3)注(2)において、

…(略)… 事前通知を行うことなく
実地の調査を実施する場合であっても、
…(略)… 納税義務者の理解と協力を得て
調査を開始することに留意する。
なお、税務代理人がある場合は、
当該税務代理人に対しても、
臨場後速やかにこれらの事項を
通知することに留意する。…(略)…

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無予告の臨場した後であっても、
納税者本人と税理士とに、
調査着手前には特定事項を
速やかに 」通知しなければならず、
そのことを明記した規定となります。

 

税務調査官による事務運営指針の違反は
国家公務員法98条 に違反することとなり、
重大な手続違反となります。

上記内容を再確認のうえ、速やかに
調査官から税理士に連絡させてください。

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