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節税になる?短期前払費用の落とし穴に要注意

巷でよく聞く節税策(正確には「課税の繰延」にとどまるのですが・・・)のうち、短期前払費用があります。節税策としての常套句のひとつです。

この短期前払費用は、無条件に認められるものではなく、その前払費用の質および量の両面から重要性が問われますので、注意が必要となります。会計上も税務上も、重要性の判断基準は異なるとされていますが、いづれにしても重要性は問われます。

法人税基本通達2-2-14の取扱いは、法人が一定の計算基準を継続して行う会計処理で、その計算基準を行うことに相当の理由があり、重要性の原則に照らして課税上さしたる弊害がないと認められる場合にその適用があるものであり、費用収益の対応関係を覆してまでもその適用を認める趣旨のものではなく、また、もっぱら租税回避の目的で不要不急の前払いを行ったようなものについては、適用することは相当でないと解されている(平成11年12月24日裁決)

 

従いまして、「課税の繰延」を目的に短期前払費用を採用する場合は、

  • 相当の理由があるか?
  • 課税上さしたる弊害がないか?

を吟味する必要があります。

 

なお、あくまでも参考にしかなりませんが、会計上における考え方として、

たとえ毎期末の計上額がほぼ一定であっても,その企業の営業の性質上重要な営業費用に属するもの,例えば,海運業者における借船料や船体保険料,百貨店業者等における店舗貸借料,自動車運送業者における車体保険料や賠償責任保険料,金融業における支払利息割引料などについては,原則どおりに厳密な期間対応計算を要し,重要性の原則は適用されないというのが監査上ほぼ一致した見解のようである(昭和43.5.13日本公認会計士協会監査委員会意見「期間損益通達の監査上の取扱いについて」参照)。引用元

とのことですので、「質」における重要性を判定する際の参考になります。

また、参考とした上記の会計上の考え方のさらなる参考にしかなりませんが、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」では、

第85条第2項
(…略…)主要な費目とは(…略…)その金額が販売費及び一般管理費の合計額の百分の十を超える費目をいう。

とされていますので、「量」における一つの判断指標としては参考になるものだと考えます。

 

当然ですが、例えば等質等量・定質定量といった前払費用のそもそもの要件を満たしていない単なる「費用の前払につきましては前払費用ではなく「前払金」であり、その前払金には短期前払金という制度はありません。