誤りやすい社宅の税務 – 住宅用地等の特例の適用”前”か”後”か。固定資産税課税標準額とは…

役員又は使用人に社宅を貸与した場合には、通達において、家屋又は敷地の固定資産税の課税標準額を基礎として、通常の賃貸料の額を計算することとされていますが、この社宅に係る「通常の賃貸料の額を計算する場合における固定資産税の課税標準額」について、間違った解釈を見聞きしますので、あらためて記しておきます。

住宅用地等の固定資産税課税標準額は、住宅用地等に対する課税標準の特例が適用されますので、税務における社宅に係る「通常の賃貸料の額」を計算する場合に、この特例を適用するのか、適用しないのか、判断に迷うこととなります。

通達においては、この特例の扱いについて、特に留意されていません。社宅に係る通達の制定が昭和26年、固定資産税における課税標準の特例の創設が昭和48年、その後長い年数が経過していますが、課税実務において、この特例を適用するのか適用しないのか、どちらが正解なのでしょうか。正解と断定できないまでも、実務における多数説または有力説はどちらなのでしょうか。
 
国税庁の質疑応答では、

社宅を貸与した場合の「通常の賃貸料の額」の計算の基礎となる「固定資産税の課税標準額」とは、どのようなものですか。

という、せっかくの具体的な照会に対する回答で、この特例への言及は忘れられて(避けられて)いますので、残念ながら参考にはなりえません。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/03/04.htm

ここでの回答内容では、あくまでも固定資産税課税標準額について地方税法で規定されている内容に沿って、一般的で当たり前の説明がされるにとどまり、さらに「原則として…」とあるように、同じく地方税法で「特例として」規定されている住宅用地等に対する課税標準の特例には特に言及していません。従いまして、社宅に係る通常の賃貸料の額を計算する場合における「住宅用地等に対する課税標準の特例の適用」の可否について、課税庁の公式な見解はこの質疑応答からはわかりません。

そこで、課税庁側の人間が著した文献が、私的な著作物に過ぎず公の見解の表示に当たらないものの、参考になります。そこでは、3分の1といった住宅用地等に対する課税標準の特例を適用したの固定資産税課税標準額を基として差し支えない旨、その理由と共に解説されています。(冨永賢一「源泉所得税 現物給与をめぐる税務〈平成23年版〉」185頁,大蔵財務協会)

従いまして、税務における社宅に係る「通常の賃貸料の額を計算する場合における固定資産税の課税標準額」についてですが、住宅用地等に対する課税標準の特例を適用した【後】課税標準額、すなわち「課税台帳に登録された価格」でもなく、「固定資産税評価額」でもなく、通達の文言どおり「固定資産税課税標準額」にて算出すればよいこととなります。

この著者の経歴(下記参照)から判断すると、 特例適用【後】で計算することが、課税実務においては定着していると考えることができます。

 

(参考)
冨永賢一
国税庁法人税課源泉所得税監理係長、同法人税課源泉所得税審理係長、浅草税務署法人課税部門統括官、国税庁審理室企画専門官、同審理室課長補佐、杉並税務署法人担当副署長、税務大学校研究部教授、国税不服審判所沖縄事務所国税審判官、東京国税局調査部統括国税調査官を経て、東京国税不服審判所国税審判官(2011年9月時点)